急性腸炎とは
「ちょっとお腹の調子が…」ということがありませんか?
胃や腸に炎症が引き起っている状態で、症状は、軟便~下痢、腹痛、嘔吐、発熱が見られます。
大きく2つに分類され、“非感染性腸炎”と“感染性腸炎”です。
前者のは、“食べ過ぎ”・“飲みすぎ”、夏風邪でよく知られる“エアコンによる冷え過ぎ、寝冷え”、また“冷たい食べ物によるお腹の冷え過ぎ”等があります。
後者は、傷んだ状態や不十分な調理・保存状態の食べ物の摂取による病原(細菌、ウイルス)の経口感染があります。(飲食店などで集団発生した場合の「食中毒」はよく知られています)。
後者のもう一つに、通称“お腹にくる風邪”と言われている感冒性腸炎です。風邪の場合はほとんどがウイルス感染で、多くの場合気道感染による鼻水(鼻腔)、のど痛(咽喉頭)、咳(気管支)を考えがちですが、経口、接触、飛沫感染によって胃・腸に炎症を引き起こし、下痢、腹痛、嘔吐といった症状を引き起こすウイルス感染もありますので注意してください。(アデノウイルス、ノロウイルスがよく知られています)
急性腸炎の原因
非感染性腸炎
細菌やウイルスの感染以外の原因によって起こります。
暴飲暴食・消化不良による食事性の腸炎、卵、牛乳、そばといった食物を摂取したときのアレルギー性腸炎、キノコや貝類による中毒性の腸炎、虚血性腸炎などがこれにあたります。
虚血性腸炎とは、動脈硬化などによって腸に血流障害が起こり、腸粘膜に出血性の炎症を伴う病気です。主に、腹痛、下痢、血便などの症状をきたします。
感染性腸炎
ウイルスや細菌、あるいは稀に寄生虫の感染を原因として起こります。非感染性腸炎よりも頻繁に見られます。これらは食品、水、人、動物、糞便などを介して感染します。
ウイルス性腸炎の原因ウイルスとしては、ノロウイルス、アデノウイルスがよく知られています。その他、ロタウイルスなど、さまざまなウイルスも腸炎を引き起こします。
細菌性腸炎の原因細菌としては、カンピロバクター菌、サルモネラ菌、病原性大腸菌、赤痢菌、コレラ菌などが挙げられます。
吐き気・嘔吐、腹痛、下痢、発熱などの症状が、突然現れます。
急性腸炎の症状
- 吐き気、嘔吐
- 腹痛
- 下痢
- 血便
- 発熱
嘔吐か下痢が起こる、あるいはその両方が起こる場合には、脱水症状にも注意しなければなりません。
特に、お子様やご高齢の方は、脱水のリスクが高くなります。経口での水分補給が難しい場合いは、点滴が必要になります。
急性腸炎の検査、診断
問診
時間、食事内容、発症状況 痛みや下痢など症状の程度などお聞きします。
触診
痛み、腹部の状態、全身状態を診ます。
血液検査
炎症,感染の有無などを調べます。
便検査
また必要に応じて、便・腸液を培養した上での細菌の検出、便・吐しゃ物のウイルスに対する抗原検査などを行い、診断します。
大腸カメラ検査(感染性腸炎の可能性の場合)
炎症反応、下痢、血便の程度に応じて重症度の把握する際、 初期の段階でも特徴的な所見があり確定診断のために行われる場合があり。
急性腸炎の治療
経口補水液などによる経口で水分補給、あるいは点滴などを行い、自然治癒を待ちます。
基本的に食事は摂らず、回復の具合を見ながらお粥やうどんから食事を再開します。
発熱や腹痛に対する解熱鎮痛剤、細菌性腸炎に対する抗菌薬を使用することもあります。
下痢止めは、細菌・ウイルスの排出の妨げになるため、最低限の使用とします。
感染予防
族が細菌・ウイルスに感染した場合には、以下のような対策を講じ、感染者を増やさないようにすることも大切です。もちろん、普段からの感染予防としても有効です。
手洗い・消毒
帰宅時、トイレ後、感染者の看護の後、肉・魚・卵に触れた後は、その都度手洗い・消毒を行いましょう。 ノロウイルスなどのアルコール耐性のある病原体に家族が感染した場合には、塩素系漂白剤を希釈した液体でのドアノブ・便器の清拭が有効です。
食品の加熱、包丁・まな板の殺菌
食品の中心部までしっかりと加熱することが大切です。加熱が不十分だと、病原体が残ってしまうことがあります。 生肉や魚を切ったあとの包丁・まな板の殺菌は、煮沸による殺菌、80℃以上の熱湯での5分以上の浸け置きが確実ですが、なかなか難しいかと思います。そういった場合には、エタノールなどのアルコールによる除菌が有効です。ドラッグストアなどでキッチン用のものが販売されています。
吐しゃ物・糞便の片付け
感染者の吐しゃ物や糞便を片付ける際には、使い捨ての手袋・マスク・エプロンを着用します。吐しゃ物、糞便をペーパータオルで拭き取った上で、次亜塩素酸ナトリウムまたは塩素系漂白剤で消毒します。最後に、水拭きをして完了です。 手袋・マスク・エプロンは袋などに入れて口をしっかり縛り、廃棄します。吐しゃ物・糞便は乾燥すると空中にウイルスや細菌をまき散らしてしまうため、しっかりと密封することが大切です。また、片付けの際には常時換気扇を回すか、近くの窓を開けておくようにしましょう。