胃がんとは
胃がんは、胃の粘膜の細胞が何らかの原因によってがん化し、増殖していくことで発生するがんです。
粘膜層で発生した胃がんは、その後大きくなると粘膜下層、固有筋層、漿膜へと深く入り込み、胃の外にある大腸や膵臓へ広がっていきます。
このようながんの拡大のことを「浸潤」と呼びます。一方で、がん細胞が血液やリンパ液に乗って遠くの臓器へと広がることを「転移」と呼びます。
進行した胃がん通常起こり得る病態です。
また、若年者にしばしば見られるスキルス性胃がんというものも存在します。スキルス性胃がんは、胃の壁内を浸潤していくため、粘膜上の変化はあまり目立ちません。胃壁が厚くなったり硬くなりながら拡がる、進行の早いがんです。胃壁やひだの伸展度合いから判断されされます。
頻度
罹患率は、男性で第2位、女性で第4位、全体で第2位に位置します。また死亡率では、男性で第2位、女性で第4位、全体で第3位に位置します。
胃がんは、かつて国民病とも言われているがんでしたが、近年は胃がん検診、ピロリ菌の除菌治療によりのその死亡率が低下していますが、しかし、以前として男女計としてがん死亡順位の第3位にあります。
統計上、特に早期がん(ステージ1)であれば、5年生存率は約95%ですが。一方でステージが進んだ進行がん、中でも転移を起こしているケース(ステージ4)では、5年生存率は約9%とかなり低くなっています。
当然ながら、胃がんは、医学が進んだ現在でも、いかに早期での発見・治療が重要であるかが分かります。
胃がんのできる背景
早期に発見すれば胃がんは治ります。早期胃がんの5年生存率は95%以上です。
胃がんの発生シナリオ
以前は胃がんの発生原因は、下記程度しか分かっていませんでした。
- 食生活(食塩、魚・肉の焦げた部分)
- 環境要因(タバコなど)
- 遺伝要因
しかし近年、胃ガンの発生の元には強い萎縮性胃炎(+ピロリ菌感染)があることがわかりました。
この萎縮性胃炎も以前は、食生活や年齢的変化からなるものと安易に考えられていました。
しかし10年以上のピロリ菌感染で慢性的な炎症が続き、強い萎縮性変化や、さらに腸上皮化生といわれる状態となり、やがて胃ガンが発生するというシナリオがわかりました。(欧米では、腸上皮化生を前ガン状態としています)
つまり、“胃ガンが出来る前にピロリ菌感染と萎縮性胃炎がある“ということです。
胃ガンの95%以上はピロリ菌感染に基づいて発症するといことが明らかになっています。
ヘリコバクター・ピロリ感染⇒慢性活動性胃炎⇒萎縮性胃炎⇒(腸上皮化生)⇒胃ガンピロリ菌に感染している全員が必ず胃ガンになるというわけではありません。
実際には、胃ガンの発生はピロリ菌感染者の一部の方となりますが、日本人の50歳以上の70以上はピロリ菌陽性者なのです。
欧米に比べ日本人に胃ガンが多い理由がわかります。
胃がんの症状
早期の胃癌の段階では、自覚症状がほとんどありません。胃がん特有の症状はなく、 慢性胃炎や胃潰瘍と似た様下記のようなな症状です。
- 胃痛(みぞおちの痛み)
- 胸やけ、胸の違和感
- 吐き気
- 食欲不振
- 悪心
- 嘔吐
また、市販の胃薬などを服用して一時的に治まってしまうことがあるため、受診が遅れている方も少なくないようです。転移した後になって わかるケースもしばしばあります。その他、胃がんの進行に伴い、吐血、下血、倦怠感、体重減少などの症状が見られることがあります。
胃がんになりやすい体質
胃ガンの前段階に ピロリ菌感染 と 萎縮性胃炎(慢性胃炎)があるというお話をしました。
これに生活・環境要因と遺伝要因などが関与して胃ガンが発生します。
胃ガンが国民病と言われるほど日本人には胃ガンになる人が多く、将来自分も胃ガンになるかもしれないという不安がつきまといます。
前もって自分が胃ガンになりやすい体質かどうか知りたいと思いませんか?
胃ガンのなりやすさは、次の2つで分かるようになってきました。
1)萎縮性胃炎の程度を調べること
2)ヘリコバクター・ピロリ菌感染の有無を調べること
これらの判断は血液検査で出来ますので、胃カメラ検査にどうしても抵抗があるという方にも是非おすすめです。
1)萎縮性胃炎の程度は、血液検査項目の血清ペプシノーゲン(Ⅰ、Ⅱ)測定で判定できます。
血清ペプシノーゲン(PG)数値が低いほど萎縮性胃炎は進んでいます。
基準に 血清ペプシノーゲンⅠ<70、 PGⅠ/PGⅡ比<3 陽性
2)ヘリコバクター・ピロリ菌感染の有無を調べる検査(HP)は
- 血清抗体検査(血液検査)
- 便中抗原検査(便検査)
- 尿素呼気検査(呼気検査)
の3種類があり、いずれも内視鏡検査をしなくても判定できる検査です。
この1)と2)の検査結果で
PG(-)・HP(+) ⇒ PG(+)・HP(+) ⇒ PG(+)・HP(-)
の順に萎縮性胃炎の程度は進んでおり、将来胃がんになりやすい体質(素因)があるということです。
(但し、2011年時点でこれらの検査の全てが健康保険の適応ではないことを了解ください)
胃がんの検査、診断
当院では、レーザー光を搭載した、ハイビジョン画像を映し出す富士フィルム製の内視鏡による胃カメラ検査使用し、熟練した医師による、不快感、苦痛のない胃カメラ検査を行っており、最新の高度内視鏡システムを用いて緻密、詳細な検査を行っています。
粘膜の微細な変化を強調する機能を搭載しており、精度の高い検査ができます。 内視鏡の先端から組織を採取し、病理検査による確定診断も可能です。
胃カメラ検査に苦手意識のある方には、ご希望に応じ鎮静剤を投与し、ウトウトと眠ったような状態で検査を受けていただけます。
日本内視鏡学会専門医である院長が、経験と知識に基づいた正確な検査を行いますので、安心してご相談ください。
胃がんの治療
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内視鏡検査による治療
ごく小さながんであれば、内視鏡によって観察しながら切除することができます。粘膜表面のがん、そしてそのまわりの組織を切除します。
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外科手術(開腹手術、腹腔鏡手術)
やや進行している胃がんの場合には、外科手術が必要です。がんを含む胃の一部を切除、場合によって全部を摘出します。
近年は、腹腔鏡による胃がんの手術も増えてきています。傷口が小さく、社会復帰も早くなります。
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化学療法
点滴または内服による抗がん剤治療です。抗がん剤といってもさまざまな種類が存在し、進行がんの場合、進行の程度などによって使い分けられます。
手術の前後に化学療法を組み合わせることもあります。
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胃がんの予防方法
胃ガン発症の95%以上はピロリ菌感染に基づいています。
ピロリ菌の除菌により胃ガンの発生を抑制出来ることが明らかとなっていますので、出来るだけ若い年齢での除菌治療をおすすめします。
一度除菌を行うとピロリ菌の再感染はほとんどありません。
但し、ピロリ菌除菌により完璧に胃ガンを抑制出来ないこともわかっています。
1)と2)の検査結果が良かったからといって、胃ガンにならないということではありません。
胃ガン発見の一番の方法は、定期的な胃内視鏡検査だということは変わりありません。
近い将来、胃ガンの二次検査は胃X線検査から胃内視鏡検査にかわると考えられます。
そのため、胃カメラ検査自体がつらくあってはいけないと思っています。
体の中に物が入るので怖い・えずいてつらそう・つらい、大変だと聞いた…等の理由で胃カメラ検査は敬遠されがちですが、当院の内視鏡検査は格段に楽な検査です。
不安・苦痛なく検査が出来るので、定期的に続けられます。
実際に当院で内視鏡検査を受けられた患者様の声を、当院ホームページや待合室に掲示していますので是非ご覧ください。