ピロリ菌とは
正式には「ヘリコバクターピロリ」と言います。
ヘリコバクターは『ヘリコプター』のヘリコと同じで“らせん形(ヘリコイド)”から、バクターは、『バクテリア(細菌)』から、ピロリは、『胃幽門部(ピロルス) 』からとられています。
胃の中は胃酸によって強い酸性状態であるため、一般の菌は生息できません。しかしウレアーゼという酵素を持つピロリ菌は、胃液の尿素を分解しアンモニアをつくり、自分のまわりだけアルカリ性の環境を維持できるため、生息が可能なのです。
ピロリ菌感染は、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどの原因になることが分かっています。当院では、ピロリ菌検査・除菌治療を行っておりますので、気になる方はお早めにご相談ください。
ピロリ菌検査を受けるタイミング
- 胸やけ、食前・食後の胃の痛み、吐き気、嘔吐などの症状が現れたとき
- 胃バリウム検査で「慢性胃炎」を指摘されたとき
また、以下に該当する方は、早期にピロリ菌検査を受けることをおすすめします。
- 胃・十二指腸潰瘍の経験のある方
- 胃・十二指腸潰瘍の再発を繰り返す方
- 胃がん家系の方
- ご両親・ご家族にピロリ菌感染があった方
頻度
先進国では、ピロリ菌の感染者数が少ないのですが、日本での感染率は減少傾向にあるもののまだ高い状態です。
ピロリ菌感染者は、およそ3000~3500万人ともいわれており、ピロリ菌の感染率は、衛生環境と相関すると言われ、上水道など環境が行き届いていなかった時期に幼少期を過ごした年代で感染率が高く、日本人の場合、70歳以上で70%以上、60歳代で50%、50歳代40%台、40歳代で30%台、30歳代~20歳代20%との報告があります。
衛生環境の整ったことにより感染割合は減少し若年世代の感染率は低くなっています。
感染経路
感染経路は、はっきりとは分かっていません。
しかし、経口感染を主にしているのではないかと考えられます。上下水道が十分に発達していなかった時代を過ごした方は、今の若い世代と比べると感染率が高くなっています。また井戸水を生活用水として使用している地域では、同様に感染率が高くなっています。
現在の若い世代では上記のような感染はほとんど考えられないものの、親から子への食べ物の口移し、箸やスプーンの共有(親の使った箸・スプーンで食べさせる)などが感染の原因になっているのではないかと言われています。
症状
- 胸やけ
- 食前や食後の胃の痛み
- 吐き気、嘔吐
- 食欲不振
- 胃もたれ
- 胃の張り
ピロリ菌感染に伴う胃炎によって上記のような症状が起こります。ただし、8~9割は無症状です。
ピロリ菌の検査・診断
胃内視鏡を使用する検査と、使用しない検査があります。
胃内視鏡を使用する検査(当院で行っている方法)
① 迅速ウレアーゼ法
ピロリ菌の持つ酵素ウレアーゼの働きで作られるアンモニアを調べて判定します。
② 鏡検法
採取した組織を染色して、顕微鏡で調べます。
胃内視鏡を使用しない検査
① 尿素呼気検査
検査薬を内服後、一定の時間を置いてから、吐き出した息を調べます。ピロリ菌のもつウレアーゼ酵素の働きで作られる二酸化炭素を検出し、判定します。
② 抗体測定法
採血により、血液中のピロリ菌の抗体の有無を調べます。
③ 便中抗原測定法
便を採取してピロリ菌抗原の有無を調べます。
保険適用でピロリ菌検査ができる条件
- 胃カメラ(胃内視鏡)検査、胃バリウム検査で胃・十二指潰瘍と診断された方
- 胃カメラ(胃内視鏡)で慢性胃炎の診断された方
- 早期胃がんに対する内視鏡的治療後、ピロリ菌感染胃炎が認められる方
ピロリ菌除菌の治療効果
治療
1次除菌
1種類の「胃酸の分泌を抑える薬」と2種類の「抗菌薬」を1日2回、7日間服用します。
判定は、4週間以上が経過してから、除菌ができたかどうかを調べる検査を行います。
陰性であれば、除菌成功となり、治療は終了です。
除菌成功率は、約70~80%です。
2次除菌
薬の種類を変更し、再度1日2回、7日間服用します。
1次除菌と同様、判定は4週間以上が経過してから検査を行います。
陰性であれば除菌成功となり、治療は終了です。
除菌成功率は、約90%です。
※2次除菌までは保険適用となりますが、3次除菌以降は、自費診療の扱いとなります。
自費診療となるピロリ菌検査・除菌治療
1,健診、ドッグで血液の結果だけで、ピロリ菌除菌の治療、
2,胃カメラ検査なしにピロリ菌検査
3,3回目以降の除菌治療
4,抗生剤ペニシリン系のアレルギーの為、他剤によるピロリ菌除菌の治療 は、保険適用されず自費診療になります。 ご了承のほどよろしくお願いいたします。
ピロリ菌の予防について
感染経路がはっきりしていない以上、決定的な予防法というものはありません。
ただ、近年の若い世代での感染率が低下していることを考えると、衛生環境が整った生活を送ることは大切だと思われます。井戸水を飲むといったことも避けるべきでしょう。
また、こちらも確証はありませんが、親から子への食べ物の口移し、食器の共用なども、念のために避けておくべきかと思われます。
若年者のピロリ菌対応
慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、さらには胃がんなどのリスク上昇を招くわけですから、ピロリ菌の除菌は早くに行っている方がよいと言えます。
内視鏡を使用しない尿素呼気検査、抗体測定法(採血)、便中抗原測定法などもありますので、10代の若い方であってもピロリ菌検査は可能です。実際に、17歳高校生に対するピロリ菌検査を実施したという報告もなされています。
体重が40キロ以上あれば、大人と同じ量での投薬治療が可能になりますので、近い将来、高校生で一般的にピロリ菌検査が行われる、除菌治療が行われるという時代が来るかもしれません。
当院でも、若い方へのピロリ菌検査・除菌治療を行っております。ぜひ一度ご相談ください。