食中毒

食中毒とは

食中毒と症状について食品を口にしたことを原因とする胃腸炎・神経障害などの中毒症の総称を、「食中毒」と言います。
多くの場合、吐き気・嘔吐、腹痛・下痢といった胃腸障害が、突然起こります。
なお、食べ過ぎや飲み過ぎでこういった症状が起こることもありますが、こちらは食中毒ではありません。有害な微生物・化学物質を身体に取り入れたことによって症状をきたす場合に限り、食中毒と診断されます。

受診のタイミング

以下の場合は特に注意が必要です。

救急外来に受診

  • 水分の補給ができない場合
  • 一日に10~20回に及ぶ、激しい嘔吐・下痢がある場合
  • 激しい腹痛
  • 腹痛が続く場合
  • 呼吸が不安定、意識が朦朧としている場合。
  • グッタリしている場合
  • 高熱がある場合

消化器内科へ受診

  • 血便など血液が混じっている場合
  • 腹痛、下痢が続く、残っている場合

食中毒と症状について

食中毒症状が改善されない場合、症状が激しい場合には、早急に病院へ行くようにしましょう。

食中毒は夏季だけでなく一年を通して発生することから、手洗いや保存方法、調理方法などに気を付けて、予防対策を行うことが大切です。

食中毒の原因や予防のポイント

腸炎ビブリオ

主な原因食品 魚介類(刺身、寿司、魚介加工品)
潜伏期間 8~24時間
感染経路/菌の特徴 海水中に生息。
真水や酸に弱い。
室温でも速やかに増殖。
時期 夏季~秋口に多発。
症状 腹痛・水様下痢・発熱・嘔吐
予防のポイント
  • 魚介類は新鮮なものでも真水でよく洗う。
  • 短時間でも冷蔵庫に保存し、増殖を抑える。
  • 60℃、10分間の加熱で死滅。
  • 魚介類を取り扱った調理器具、手指は十分に洗浄・消毒し、二次汚染防止。

サルモネラ属菌

主な原因食品 鶏卵、またはその加工品、食肉(牛レバー刺し、鶏肉) など
潜伏期間 6~72時間(菌腫よって異なる)
感染経路/菌の特徴 動物の腸管、自然界に広く分布。
生肉、特に鶏肉と卵を汚染することが多い。
乾燥に強い。
症状 激しい腹痛・下痢・発熱・嘔吐
(長期間排菌する)
予防のポイント
  • 肉・卵は十分に加熱(75℃以上、1分以上)する。
  • 卵の生食は新鮮なものに限る。
  • 卵や生肉は10℃以下(できるだけ4℃以下)の低温管理
  • 生肉調理後の器具、手指は十分に洗浄・消毒し、二次汚染防止。

O-157(腸管出血性大腸菌)・その他の病原性大腸菌

主な原因食品 生肉、生レバー、加熱不十分な肉
潜伏期間 O-157:数日~7日
その他の病原性大腸菌:1~数日
感染経路/菌の特徴 重症化がある。
熱、消毒剤に弱い。
症状 感染者の約3割は無症状もしくは軽度な症状で終わりますが、小児と高齢者は症状が出現しやすいことが知られています。
腹痛・下痢・発熱・嘔吐
※O-157では、重症化した場合、「ベロ毒素」という強力な毒素が大腸の血管壁を破壊し、鮮血混じりの血便が出る。
溶血性尿毒症で死亡する場合もある。
予防のポイント
  • 他の細菌性食中毒と同様に調理器具、手指は十分に洗浄・消毒し、二次汚染防止。
  • 低温管理、加熱調理の励行。とくに牛肉は75℃1分間以上の加熱。

カンピロバクター属菌

主な原因食品 食肉(特に鶏肉)、飲料水、生水、牛乳、生野菜など
潜伏期間 1~7日
感染経路/菌の特徴 食肉(特に鶏肉)、臓器や飲料水を汚染する。
乾燥にきわめて弱く、また通常の加熱調理で死滅する。
症状 発熱・倦怠感・頭痛・吐き気・腹痛・下痢・血便 など
予防のポイント
  • 調理器具を熱湯消毒し、よく乾燥させる。
  • 肉と他の食品との接触を防ぐ。
  • 鶏肉調理後の器具、手指は十分に洗浄・消毒し、二次汚染防止。
  • 食肉は十分な加熱(65℃以上、数分)を行う。

黄色ブドウ球菌

主な原因食品 乳・乳製品(牛乳・クリームなど)、生ハム、握り飯、弁当、ちくわ、かまぼこ、和洋生菓子など
潜伏期間 1~3時間
感染経路/菌の特徴 自然界に広く存在し、人や動物の皮膚、口の中にも存在する。
毒素(エンテロトキシン)を生成する。
毒素は100℃、30分の加熱でも無毒化されない。
症状 吐き気・嘔吐・腹痛・下痢
予防のポイント
  • 指手の洗浄、調理器具の洗浄殺菌。
  • 手荒れや化膿創のある人は、食品に直接触れない。
  • 低温保存は有効。

セレウス菌

主な原因食品 嘔吐型:ピラフ、スパゲッティ
下痢型:食肉、野菜、スープ、弁当など
潜伏期間 嘔吐型:30分~6時間
下痢型:8~16時間
感染経路/菌の特徴 土壌などの穀類、豆類、自然界に広く生息する。
芽胞は90℃、60分の加熱でも死滅せず、家庭用消毒薬も無効。
症状 嘔吐型:嘔吐、吐き気
下痢型:下痢、腹痛
予防のポイント
  • 米飯や麺類を作り置きしない。
  • 穀類の食品は室温に放置せずに調理後は8℃以下又は55℃以上で保存する。
  • 保存期間は可能な限り短くする。

ボツリヌス菌

主な原因食品 缶詰、瓶詰、真空パック食品(からしれんこん)、レトルト類似食品、いずし
潜伏期間 8~36時間
感染経路/菌の特徴 土壌中や河川、動物の腸管など自然界に広く生息する。
酸素のないところで増殖し、熱にきわめて強い芽胞を作る。
毒性の強い神経毒を作る。
毒素の無害化には、80℃で30分間の加熱を要する。
症状 吐き気・嘔吐・筋力低下・脱力感・神経症状(視力障害や発声困難、呼吸困難など)
予防のポイント
  • 発生は少ないが、いったん発生すると重篤になる。
  • いずしによる発生が多いで注意が必要。
  • 容器が膨張している缶詰や真空パック食品は食べない。
  • 新鮮な原材料を用いて洗浄を十分に行う。
  • 低温保存と喫食前の十分な加熱。

ノロウイルス

主な原因食品 二枚貝(カキ、ハマグリなど)・患者の糞便、嘔吐物など
潜伏期間 1~3日
感染経路/菌の特徴 11月~2月にかけ集中発生。
食品中では増殖せず、人の腸内のみで増殖。
少量で感染し、感染力が強い。
病院や施設内で起こるケースがある。
症状 下痢・強い嘔吐・吐き気・腹痛・発熱(38℃以下)・通常3日以内で回復
予防のポイント
  • 手洗いの励行
  • 食材の加熱(85~90℃、90秒間以上)
  • 調理器具での二次汚染防止。
  • 給水設備の衛生管理等。
  • 嘔吐物や下痢便の処理を徹底して行う。

食中毒の症状

食中毒とは食品に起因する腹痛、下痢、嘔吐、発熱などの症状総称で原因によって症状は様々であり、数日から二週間程度続きます。
腸内で細菌やウイルスが増殖したことにより胃腸機能が低下したことによるもので下痢や嘔吐を繰り返すことで体外に排出され症状も徐々に緩和されます。

下痢や嘔吐が長時間続くことで水分や電解質が体外へ排出され脱水症状を引き起こし、重症化すると死亡することもあります。
特に小児や高齢者の場合は脱水が進んで深刻な状態へ進行する場合があります。

また、薬を服用することにより体内で増殖した細菌やウイルスが排出されず長期間腸内で留まることで症状が長期化し、特に毒素型の細菌に感染した場合には、腸内で菌が留まることで毒素を産生し重症化します。
よって下痢止めや薬や吐き気止めの薬を安易に自己判断で服用しないよう、必ず医療機関を受診して下さい。

食中毒の分類

細菌性食中毒

細菌が原因となり引き起こされる食中毒で夏季に多く発生し、食中毒の7090%を占めます。何に感染したかによ「感染型」と「毒素型」に分けられます。

感染型

飲食により摂取した細菌が腸管内で増殖することで発症する、あるいは食べ物の中で細菌が増殖してしまい、その食べ物を食べたことにより発症する食中毒で、代表的な原因菌としてサルモネラ、カンンピロバクター、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌などがあります。

毒素型

  • 生体内毒素型とは摂取された細菌が腸管内で増殖し,産生された毒素が原因物質となり食中毒症状を起こします。代表的な原因菌として腸管出血性大腸菌、セレウス菌(下痢型)などがあります。
  • 食品内毒素型とは食品内で細菌が増殖し産生された毒素が原因物質となり食中毒症状を起こします。感染型より潜伏期間が短いというのが特徴です。代表的な原因菌として黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌(嘔吐型)などがあります。

ウイルス性食中毒

ウイルスが蓄積している食品の飲食や感染者を媒介にして付着したウイルスが口に入ることで引き起こされる食中毒で、その大部分がノロウイルスです。
ノロウイルスはヒトの腸管のみ(小腸粘膜の上皮細胞)で増加し、感染を拡大させていきます。ウイルス10個程度でも発症してしまうほど感染力が非常に強く、予防を心掛けていたとしても様々な感染経路によりいつの間にか感染してしまうことがあります。ノロウイルスは遺伝子型がいくつもあり変異していくため、ノロウイルスに一度感染しても繰り返し感染、発症します。
ノロウイルスに対する有効な薬剤やワクチンは作られていないので感染した場合は対症療法を行います。
ウイルスの構造からエンベロープ(脂肪・タンパク質・糖タンパク質からできている膜)のあるウイルスとないウイルスに分けられ、ノロウイルスはノンエンベロープウイルスです。

ノンエンベロープウイルスはダメージを受けにくく、塩素以外のアルコール消毒剤が一般的に効きにくい傾向にあり、消毒剤がノロウイルスに効きにくいのもそのためです。

食中毒の治療

まずは問診、血液検査、尿検査、画像検査、便培養検査などによって食中毒の原因を特定します。
その上で、脱水症状を防ぐための点滴、抗生物質による薬物療法を行います。

コラム